マトス  (ショートストーリー)/よーかん
 
かいたしましたか?」
男が両手をヒザに移して僕の顔を覗きこんでいる。
僕はあきらめて、一度大きくため息をついた。
「まと、す、ですね。まとす。」
頭がそれ以上前に進めない。
「そうです。」
男が目を閉じて少し首をかしげる。
「何かヒントが必要かしらん。」
確かに、今、男はかすかな声でそうつぶやいた。


空調のせいでタバコの煙が男の顔に流れてしまう。
僕は男への警戒心を解かぬよう、あえてそのままの姿勢で考えているふりを続けた。
両手にアゴを乗せなおして僕を見ているようだ。
尻がスツールに突き出されていて気持ち悪い。
すが好きですと答えればそれだけでいいのか。
まもす
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