マトス  (ショートストーリー)/よーかん
 
いいのにそう聞き返していた。
「はい、マとスです。」
「マとス。」
「いえ、まと、すです。」
「あのっ。」
マとスってなんですか、そう聞こうとした僕を男は小さく頷くことでさえぎった。
「ま、と、す。つまり、文字のまとすです。」
「平仮名の。」
「はい。平仮名のまとすです。」
平仮名のまと、す。
コーヒーを一口飲む。
財布の横のタバコを取り出そうとして灰皿がないのに気づいた。
「どうして。まと、す、なんですか?」
男もカップを持ち上げて一口飲んでいる。
「あなたはどちらがお好きなのか気になったのです。」
「私が。」
「はい。あなたがです。」
僕はタバコを取り出して火
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