*満腹なおおかみ*/かおる
いているアリの坊やが1匹、
いくら蟻でも浮かんでいる華筏では
ボートにするには小さすぎるようです。
そこで
いたって気の好い狼君は
足下に生えているクマザサで
笹のおふねを
一艘造って
おいけに
うかべてやりました。
えぇ、アリの坊やが
溺れているのは
自分のくしゃみのせいだ
なんて知る由もない狼君は
またひとつ好いことをしたと
胸が一杯になったのでした。
どうしてこんなに満ち足りているのだろうと
不思議に思いながら、かけ声一発
『ヨッコラ、ドラドラ、ドッコイショ、とぅ』で
立ち上がり、春の森へと散策に出かけることにしました。
緑に透ける葉影、
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