遠い場所へ届こうとする言葉 ??中村剛彦『壜の中の炎』について/岡部淳太郎
。知られてしまえば、「春」が何の恩恵もなしに傍らを通り過ぎてしまうだろう。そんなことを許してはならない。だからこそ、五本の指の「秘密」は保たれていなければならない。
{引用=長く長く 歩きついた
二十四歳の南国の
暁の砂漠のまぶしさに
思わず足をすべらせ尻餅つくと
これから一体何を見つめ
どこへ行けばいいのか分からなくなった
そんな時真っ青に晴れた空から
友がくれた腕時計が落ちてくる
親父がくれた眼鏡が落ちてくる
母がくれた万年筆が落ちてくる
そして一編の詩が落ちてきて
見えた!
砂塵に白む少女の目
そうだ、今こそ爽やかに
一人熱い足跡を残しながら
あそこへ
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