遠い場所へ届こうとする言葉 ??中村剛彦『壜の中の炎』について/岡部淳太郎
の生真面目さだろうか。特に「秘密」と題された詩が目を惹く。
{引用=僕の指は五本とも罪人です
親指は窃盗
人差し指と中指は姦通
薬指は強盗
小指は親殺し
気品のある犯罪意識
見事な犯罪過程
様々な上級犯罪の美学を備え
すべて最上の働きをしました
そのためこの誇るべき五本の指は
栄光のギロチンにかけられます
真っ白な断頭台に第一関節を引っ掛け
僕の体重と同じ重さの刃が降ろされる
それは人波の中
世にも荘厳な日常の営み
あっちにも、こっちにも
あの黒髪輝く、横顔が可愛らしいあの子も
指先には罪の指輪をはめている
揺れる、揺れる
断頭台のぬくも
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