やまびとの散文詩(一) /前田ふむふむ
 
横たわっているのである。
それを数羽の鴉が高笑いしながら、
空を舞っているのを眺めていると、
わたしたちは、つい、このあいだまで、
当たり前のように見ていたふるさとの美しい山々の風景が、
跡形も無く崩れ去り、
砂をかむようなもどかしい憤りを感じながら
溢れる涙を懸命にこらえていたのだった。
耐えられずに、わたしたちの娘が、号哭すると、
溢れる想いが、大地を伝い、荒々しく砂煙を上げて、
赤く染まった地平線にどよめき渡ってゆく。

やまびとの散文詩・断片2

わたしたちは、何も無い荒れ果てた荒野に、
留まることを恐れて
足の歩を一歩踏み出すと、そこに新たな道ができた。
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