早月/アルビノ
 

「…そやな。」

父親が言っているのは早月の出来損ないの話だった。早月の名前は聞きたくなかった。ぼくが本物の早月に逢えるのは展望台のあかりが届くよりもずっと遠いところだと思っていたから。

「お前、前に自分の子どもできたら ”さつき”て付ける言うとったやろ。あの話思い出してな。」
「……」
「あれな、オレ顔はつらっとしとったけど、内心はほんま驚いとったんよ。」
「なんで?」

おちょこの中で揺れる酒の波紋から、父親の顔へ視線を移す。

「お前のおかんおるやろ?」
「知らん。」

母親はぼくが小さい頃に出て行ったっきりだった。どちらに原因があったのか理由は知らない。もち
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