dreamscape(1)/篠有里
 
か階下からはくどい油と卵を焼く匂いがす
る染みついてしまいそう声に出して「はははは」と口を形だけゆがめて発生さ
せた笑い声を立ててみる外がうるさくてきっと私は後少しで目覚めてしまうそ
の方が数倍マシでも後少し後少しで階段を下りきる事が出来る途中に使われな
い洋服掛けやトルソーや生きていない店員があるこの暗いデパートの非常階段
を下り切る事が出来るお願いだから待っていて冷たくなくてただ冬のまとわり
つく救いようのない暗さだけがそこにある唯一のリアルだ午前四時あたりのす
べてが群青色の世界の中それだけが近くすべき現実だお母さん待っていてお母
さんの所まで駆けていくわでもお母さん私足が動
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