坂/葉leaf
 
してくるのだ。あるいは私の立つ大地は神学的に傾く。裏切りとしての慈悲が気化し始めるのだ。坂は、私の唇から脱け落ちた知恵によって勾配を増す。私の血管は微量の電荷を生産し、私は坂への性欲に唐突に襲われる。
 私は必ず登らなければならない。なぜなら、それは私だけの坂だからだ。足裏の摩擦の豊かさを確認しながら、私は始まりに向かって垂直のいじらしさを克服してゆく。古代人の見た風景が私を取り囲み、私は空もまた傾き始めたことを知る。私は岩であったという確信を楯に、古代人の、そしてもしかしたら異星人の視覚に兢々と抵抗する。
 古代人の視覚が過ぎ去ると、坂は何物かに共鳴して低く響き始める。私はその不恭な音調に集
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