坂/葉leaf
に集中しなければならない。少しでも油断すると、私は鉄塊となり転がり落ちてしまうからだ。坂を登りきるためには、いったいどんなまなざしが必要なのだろう?どんな虹彩が?坂を登りきることは、できない。
地球は今やひとつの坂である。宇宙でさえ、かつてふたつの坂であった。私もまた、世界の末梢として、半眼の坂なのであろう。この汗は、私というおさない勾配を滑り落ちて来た液状の坂である。
気がつけば、私は普段の街路を歩いている。私は喫茶店に入り珈琲を注文する。私は自らの手の軌跡を美しいと思い、珈琲を醜いと思う。本を広げながら眼を閉じる。こうしていれば再び岩に戻れる、そんな気がするのだ。
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