坂/葉leaf
 
ことなく、全力で鉄塊になる。私は街路に転がり、無数の記憶が私の表面を傷つけるのを感得しない。私の質量は大地にはげしく憎悪されるので、私は転がらないではいられない。何かの拍子に私の放つ黒光が内側へと逆進すると、私は再び歩き始めるのだ。

 私に取り巻かれた果実がある。それは複雑に表皮をうごめかすが、私は時折それに憔悴した刃物を入れ、みずみずしい内部を視線で焼き払う。――そんなときだ、坂がやってくるのは。私はそのとき先祖の残り香を剔抉しているかもしれないし、夢の界面上で倒立しているかもしれない。だが私が何をしていようと、坂は容赦なくやってくる。
 私の家の床は哲学的に傾く。形而上の秘儀を拐取して
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