「箱の中の猫」/篠有里
祖父がナタで殺した赤い猫なのか、
それとも私が轢き殺した白い猫なのか、
遠い昔の(あくまで文章上の)箱の中の猫なのか。
そう言えば父も、母も、弟も、猫を殺しているじゃあないか。
まだそれは箱の中で生きているかもしれないじゃあないか。
一体どの猫なのか。
母方の祖父も父方の祖父もすでに死に、
多分猫と同じ場所で私たち家族を待っている。
彼等と会えるその時、私は猫と彼等の理由を聞く事ができる。
その時を今から待ちわびながら、
今もう一匹いる猫の事と、
残された祖母の事について思いを馳せる。
箱の中の猫の死を確認する事はできない。
お母さん、あの時の猫は私が知ってい
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