うたとわたし/木立 悟
の内側に棲む虫の
ひらかれることのない血まみれの羽
色あるものから色を奪い
風は海へ海へと落ちる
誰もが水しか思い起こさぬ音を聴き
水 水と書くことで満たされているものたちを
澄んでいくはずなどないものたちを
ほんとうの水底へとつれてゆく
鍵をかけてはくれまいか
閉じこめてはくれまいか
触れてみてはくれまいか
この光に触れることができるのなら
既に鍵のかけられている耳に目に
もうひとつ鍵をかけてはくれまいか
わたしを信じて待つ人々の
涙がわたしに届かぬように
うたがわたしに届かぬように
ゆらゆらと人知れず人はいて
終わりなきものを恐れている
文
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