詩集「詩遊人たち」読後感/三州生桑
質な詩語が、揺るぎなく見事に融合してゐる。
新鮮な詩語を創出する術を知ってゐる詩人。
『葡萄鼠の月
霧が低く立ち込めてゐる
地平に連なる街並の輪郭線を
淡い紫が滲ませるやうに覆ってゐる
その帯状の霧のすぐ上に
なだめるやうに添ふやうに
葡萄鼠の月が出てゐる
こころも身体も疲れきってゐるのに
妙に頭だけがさえて眠れない
葡萄鼠の月
街を抱く大きな十六夜の月を見つめてゐたら
遠く暮らす 老いた母を
なぜか ふいに思ひ出した』
◎さち
さちさんの詩は素直で愛らしい。
レトリックを駆使しなくとも、胸に沁みる詩を書けるのだ。
彼女は、誰もが感じ
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