やまびとの散文詩(二)/前田ふむふむ
 
が、
石は途中で、物言わぬ鳩になって頼りなく飛び去ってゆく。
∧母さん、わたしたちはあなたを思うとき∨
∧眩いひかりを失うのです。∨

やまびとの散文詩―断片7

わたしたちは、生温かい血を流したような夕陽を
ばら撒いてある十二本の鉄柱が立つ三角の広場に
佇むが、人の声が何処からも聞こえてこない。
しかし、わたしたちが住んでいる青い断崖の麓に
三角の広場があったのはいつのことだっただろうか。
わたしたちは、古い化石になりかけている
年老いたやまびとさえも、
誰も実際に見たことの無い夢のようなふるさとを
今日も、渇いた瞳の中で描いているが
塩辛い季節の戯れに酔いしれた
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