やまびとの散文詩(二)/前田ふむふむ
れた叩きつける驟雨が
一瞬で、わたしたちの薄幸な恋人を打ち消してゆく。
やまびとの散文詩―断片8
わたしたちは、青い断崖の麓で、過去びとが創った祈りの言葉を
あげるが、それを遮るかのように、海猫がわけもなく、
飛び交い続けている。わたしたちは、山羊の首を頭にかけて
古式衣装で着飾って、亡霊のように、前方を見やれば、
数本の帆柱をもつ大船が三隻、港の岸壁に繋がれていて、
遥か海原が広がっていた。わたしたちは、限りなくこぼれ落ちる
涙を拾いあつめて、春の花咲く山の夢の思い出を語り続け、
海原に寒々とした背中を曝して、ひたすら煙で霞む、
荒涼とした山谷をながめれば、忽ち、強い風が吹いてきて
大地は赤い砂塵の廃墟に変貌してゆく。
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