岬の家/篠有里
た物たち
嘆いている私にも一抹の喜びはあるのだ 多分このような物として
厚く埃が積もって、黒く変色した肉片をつまむ
人差し指と親指が同じ色に染まった
元からその色であったのかと尋ねられれば答えるすべはない
私の指が 肉片が 埃の色が すべて同じく染れば
私を呼んでいるあの声に身体を預けよう
館が軋む 海の音は聞こえない
音がすればするほど静かだと思うのはどうしてだろう
瞬間的に 今 この時は 死んでいる と 思う
私のふくらんだ胸を一人抱けば 冷たい床だけが真実
忘れていたい事ばかり決まって思い出す
どうにも止まらなくなって頭を抱える 止めるために
ぐるぐると世界は回
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