岬の家/篠有里
は回りだして 私の背後に階段が続く
いつまでも終わらない階段を上れば
数々の扉 開かないのから開けないのまで
密やかに私の手を待っている ドアの前に立つ 一動作
錆びたノブを握る 二動作 ノブをひねる 三動作
ドアを押し開ける それが四動作目
いくつかのドアが抵抗を示し いくつかのドアが降参した
来ればいい どんな入口も出口になるように
海鳥の希望 灰緑の空とざわめく静寂
辿り着いたその先に窓がある
汚れた厚いガラスと頑丈な木枠で出来た 大きな窓の向こうに
私の見た事のない海があるはず 背後に広がるそれではなく
遠い昔の約束も消え果て 何もない 何もない
今、私は、私をやめ 充ち満ちた丸い時間の縁を連続し、
永遠の始点を求める者 十一月の岬の家に帰結する その為に
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