水紋の子/木立 悟
道に空いた
吹雪の目に立ち
陽の光にとけだす
頬の雪を聴いている
もうひとつの吹雪を引き連れ
列車が鉄路を通り過ぎ
まばらに記号を落としては
路傍の崩れた家々を鳴らす
口笛は凍り
口笛はとけ
億の翼を灰色にし
ひとつの羽を金色にする
人の顔をした鳥が持つ珠
頁をめくりつづけても
肌色の表紙の響きは止まず
壁や枠を揺るがしてゆく
流される影
歩みゆく子
双葉の羽
茎の脚
あふれる目をした誰かがいて
何も言わずにあふれながら
見つめることで波を咎める
歩み去ろうとする背(せな)を咎める
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