紡ぎ ほどく/木立 悟
 




布の心からのばされる
鳥の翼を描く糸
文字のように絵のように
風に望みの灯火を置く


無色に織られた旗が重なり
震える音のかたちとなり
幾度も水を吸う衣
失う色さえない衣


四つの灯火がふたつになり
やがてひとつの明るさになり
ふたつはふたつのままでいて
ひりひりと互いを見つめあう


空の底に響く場所
海の底を映す場所
拙くひらく雲の手のひら
光をこぼす 陽をこぼす


空から小さな坂道へ
氷り水が降りてきて
ただきらきらと音がするだけ
ただきらきらと遠去かるだけ


      紡ぐ指が   紡ぐ糸が
    紡
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