偽・大洪水?散文詩/前田ふむふむ
食べた、その腸と骨はまとめられて水葬にふされた、やがて、魚の腐敗した腸と骨は海を汚染して、疫病をはやらせて、海面を魚の死体が覆いつくした、箱舟の生きる者は、世界の終焉の灯台を、灯している自分たちにせまる飢餓の恐怖と、かなしみに乾涸びた冷たい肌を合せあって泣いた。海は人間の広大な墓場になっていた。
7
動物たちは、雲を越えて、どこまでも青い空に、辿りついた、ほとんどの動物がすでに淘汰されて、多くのしかばねをあとにして、わずかなものだけが残っていた、
大洪水は来なかった――
動物たちは何も得る者が無く、遥か高みで茫然として佇み、絶望を貪りながら、激しく泣いた、やがて、どこからと
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