蓮葉氷の路/蒸発王
花婿は姉さんの花嫁姿を見ると
一言だけ
たったの 一言だけ
綺麗だ
と言い残して
北の海の彼方へ行ってしまった
数日後
姉さんのもとに
花婿の骨が届いた
名誉な死の色は
皮肉にも
姉さんが着た花嫁衣装と同じ
雪のような白さだった
そして
姉さんも後を追うように
いや本当に後を追って
逝ってしまった
姉さんの死体は
あの大陸へと続く流氷の海を漂っていた
姉さんの死装束は
真っ白な花嫁衣装だった
涙は出なかった
ただ
姉さんは
ちゃんとお嫁入りできたのだろうか
それだけが心配で
姉さんが死んでから
毎日流氷を
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