蓮葉氷の路/蒸発王
 
氷を眺めていた

真冬の綻びが大きくなって
春めいた日々が続いた
ある朝


蓮葉氷ができた



薄く張った
蓮のように丸い氷が
海に広がる
カチカチという音を立てて
ぶつかり合い
また砕けて漂う
儚げに白い砕氷の海原



その


白さの遥かを



姉さんが歩いていた






あの時の
雪のような純白の花嫁衣装を
長くなびかせて
朝日が照らし出す
蓮葉氷の路を
姉さんは白い幸せに包まれて
彼方へ
彼方へと

歩いていた



遠くを見つめた
後ろ姿の姉さんを
私は呼びとめることはできなかった
寂しさよりも
あの路を通ってお嫁入りをする
姉さんの姿に
嬉し涙が止まらなかった





あれから何十年もたった

今も
蓮葉氷が出来ると
遠くに姉さんの影を探してしまう



蓮葉氷の路の果て

死と幸の二つの色を交えた

白い影を






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