黒と歩み/木立 悟
ふいに軽くなったからだから
いったい何が抜け出したのか
いつものようにうつむいたまま
何も思うことなく歩きつづけた
なぜか息をするたびに
ひとくちの黒が出ていった
叫びのたびに 繰り言のたびに
それは濃くなるようだった
屋根に溶けて 月は暗く
すぐそばの星さえ呑めずにいた
ちょうつがいの外れた瞳の海
家並みの果てにかがやいていた
持つものも待つものもないうたが
現われては現われては消えていき
めまぐるしい黒を踏みしめた跡
一瞬の重なりの道につづいていた
目の前から埃はいつまでも去らず
やがて国になり 空になり
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