黒と歩み/木立 悟
 
描くことを 焼くことを
刻むことを繰りかえした


花はけもののかたちにふりかえり
林の奥にひとりはばたき
傷は空を映して浮かび
羽だけを羽だけを導いていた


火でも光でもむらさきでもなく
つぶやきが野を動かして
無数の陰のうねりのなかから
微笑むうたは現われた


血のにおいの春の切れはし
ひとくちの黒に降りそそぎ
重くも軽くもない冷たさの
水紋の歩みに寄り添っていた










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