「ばあちゃんの不思議なラーメン」/do_pi_can
奥さんや子供を引き連れて帰ってしまって以来、いい人が来てくれず、とうとう手放さざるを得なくなってしまった。
老人ホームに住み始めて、しばらく経ったころ、思い切って、一度だけラーメン屋を尋ねてみたが、店内はきれいに改装され、ばあちゃんの見覚えのあるしみやら、傷は、跡形もなかった。カウンターの中では、三十歳くらいの髭を生やした男の人が、二十歳前くらいの女の人と一緒に汗水たらして働いていて、それが、ラーメン屋を切り盛りしていたころの自分達の姿とオーバーラップして、自分一人が世の中から取り残されてしまったようで、ズシンとさみしさを感じた。
老人ホームは、一人六畳の部屋に共同炊事場、共同便所、共
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