九鬼周造著『日本詩の押韻』再読/狸亭
詩の押韻』の末尾でその点について「押韻の試作が拙劣であるといふやうな現実の事実から、押韻の未来に対する懐疑が帰結されてはならない。」と述べざるを得ませんでした。その理由はすでに九鬼の論考の中で明らかであると思います。まさに「数千年の伝統ととおしてみがきあげられた真正品」と比べられては一言もありません。いやむしろそのような高みでの比較がなされることは幸福な事態であると申せましょう。ただ「模造品」とはあまりにも酷い言い方であると思います。
日本の近代詩は明治15年(1882年)に出版された『新體詩抄』が初めであり透谷の『楚囚之詩』が明治22年(1889年)のこと、しかも江湖の喝采を博した藤村の『若
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