九鬼周造著『日本詩の押韻』再読/狸亭
作が拙劣 であるといふやうな現実の事実から、押韻詩の未来に対する懐疑が帰 結されてはならない。私は未来に於いて、天才詩人が出て来て、日本 語の有する可能性の中から、真に美しい押韻詩を生んでくれることを 希望してやまない。私はこの希望を抱きながら、またこの希望の実現 される日の到来を信じながら、単に理論的指針のやうなものを提供す ることで満足する。今日の日本詩壇になくてならぬものは、ただ美だ けへの絶対的盲目的帰依と、詩神のために悪戦苦闘を辞さない雄々し い魂とである。南米ペルーの征服者ピサロであったと思ふが、或時、 剣を抜いて地上に円形を描いて、部下に向かって、「目指す先には金 山がある。進勇気あ
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