九鬼周造著『日本詩の押韻』再読/狸亭
 
日本語の詩韻は二重韻が最も適当である、と結論します。例文をいちいち引き写すことは紙面の関係でとても無理なのが残念ですが、例えばほんの一例として次に挙げておきます。

 松の花      (ana)
 苫家見に来る序かな(ana)  (芭蕉)

 をりからぱたぱたと  (ato)
 草屋根におりて来た野鳩(ato)(田中冬二)

 なお「明治の初期、新體詩の成立と同時に矢田部尚今が『春夏秋冬』の序に『句尾の二字を以て韻を踏む』と云つて、二重韻の価値をはっきりと自覚したことは特筆すべき事実である。(中略)其後は岩野泡鳴が二重韻の必要を力説し、森鴎外も二重韻の詩を作った。」と述べておりま
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