九鬼周造著『日本詩の押韻』再読/狸亭
る筈である。なぜならば、表現界の客観的法則に 従ふ主観の受動は、表現界を創造する主観の能動にほかならない。受 動はパトスであることによって受動から能動へ反転する。表現は自己 犠牲を媒介として自己肯定を実現するのである。法則を拘束として意 識しないところに、芸術家としての、また人としての偉大さとパトス の創造力とがある。(「押韻の芸術的価値」全集第四巻239頁)
二 不定詩と押韻
次の主題である「不定音詩」とは「狭義の自由詩」のことです。敢えて「狭義の」というのは定音即ち音綴の長短不定であり、各詩行の長さをいうからです。「口語体、文語体の選択はその都度、詩人の感情なり題材なりによっておの
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