九鬼周造著『日本詩の押韻』再読/狸亭
 
『歌經標式』や古今の作例をもとに精緻な芸術論を展開します。朔太郎、白秋の詩論も適切ですが、完璧なヴァレリーの作例及び「韻律の形式が詩に缺くべからざることを力説し」た言葉は特に美しいものです。曰く、「感激は作家の心の状態では無い。火力は如何に偉大であるとも、機械によって技術上の拘束を受けて、初めて有用となり、原動力となるのである。適切な束縛が火力の全く消散せぬやうに障害物とならねばならぬ」。そして九鬼のストイックな芸術論は次のように結ばれます。

  およそ形式に束縛を感ずるのは詩人にとって決して誉では無い。みづから客観的法則を立て、みづから客観的法則に従ふとき詩人は自然 のやうな自由を感ずる筈
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