冬の庭にて?印象/前田ふむふむ
 
、おとなしい太陽の足跡を辿りながら軒下の苔むした岩にうずくまる。アゲハ蝶をつつむ光の粒子は、乾燥した冷気を吸って、岩の心象を骸骨にする。アゲハ蝶は冬の熱狂のなかで、硬直する。――― 
青空に芽吹き始めた雲は、訪れない春に眠る種子を、白く凍りつくアゲハ蝶の死骸に解き放つかなしい虚構の試みか。おぼろげな輪郭を浮かべる、雲の下を羽ばたく、鳥たちの声が、夏の記憶を溶かした、液状の樹皮をなぞる。
    
熱いお粥を食べながら、私は冷たい手を電気ストーブで温めてみる。明るい陽射しが部屋中を這い回り、天井のすみは海のようだ。38・2℃の体温計を見て、少し苦しい。病んでいるわたしは、まるで今だけのためにあ
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