冬の庭にて?印象/前田ふむふむ
にあるようだ。過去は朦朧とした闇に消え去り、未来は思考することすら苦痛で遥か遠い、この今の苦しみだけが、この疲弊している今のわたしだけが、生きているわたしだ。
硝子戸越しの縁がわでは――、
時がざわめく昼の庭の指先に、弱々しいひかりが絡まりついて、孤独な剃刀のように景色を切断する。その裂け目に朝が、撫ぜられながら、落ちてゆく。裂け目は動き出して、縁がわで、揺れながら恍惚とする。――
未来を慕う胎動する季節ののどに、刃物を突きつける風のなかを、蒸気の油紙で蔽われるひかりの母が、空の上で寂しく傾いて、夜を飲み込んだときから、凡庸な姿で天上の橋を渡り、表情をわずかに赤らめて、幼子の顔が
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