3月/日朗歩野
春とはいえまだ寒い。
夕方の風が僕の顔を険しくさせる。
クマを取り込みながら、ふとつぶやく。
「ん。彼女は質の良いクマを持ってるなあ・・・。僕のなんてネズミ男のようだ。」
彼女のクマは、薄い茶色で厚みがありほこほことした感じがした。
僕もこのクマを着たらどんなに質の良いクマになれるだろう・・・。
洗い立てのそのクマをもって、僕は身構えてみる。
やはりちょっと小さそうだ。
これでは、窮屈そうな変なクマになってしまう。
僕はサラリと諦め、床の上に取り込んだたくさんのクマを、一つ一つしまいはじめる。
良いクマでいるためには、こだわりすぎは良くないのだ。
そう、色んな感じのハチ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)