履歴書/霜天
 
まだ声が上手くいけない
扉の前で迷っていると
ここまでの、空の履歴が落ちてくる
からっぽになれる瓶の底には
薄い眠気で、まだ僕がいる


軽くなった手のひらには
まだ水分が、残っていて
もう少しだけ繋いでいられるようだった
快速電車の網棚の上
零してしまった鞄の行方が
回転しながら戻ってくる

そこから上手く選べない僕の後ろで

鍵を掛けたままの引き出しには
たくさんの言葉が詰まっている
忘れる、ことも出来ないもの
君の口笛の音の外れたリズム
調子はずれの、飛び方で空を
駆けるように埋めていった

 いつも日曜日の空になると
 図書館の声の届かない場
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