やまびとの詩?散文詩/前田ふむふむ
 
に変貌した。全てが半分欠落して、林檎を手に取ると果実は半分しかない。その半分には、水の無い小川が流れている。異彩を放つ大伽藍の多くは、その半分には、木の無い森が抽象の風景を見せている。その中の水銀が流れる直立するみずうみには、溢れるばかりの長さの無い青蛇が泳いでいる。暑い夏の半分に雪が降りそそぐ片輪の季節が過ぎていく。だが、猿の仮面を掛けた部族たちのなかでは、世界が半分欠落していると気付く者は、誰もいなかった。
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夕陽が一面、血の色をしていた日に、断崖の上で戦争が起こった。それは、一人の子が親を殺すことから始まった。次に弟が兄を殺した。猜疑心と恐怖が包む、殺害の連鎖。殺害の輪が
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