やまびとの詩?散文詩/前田ふむふむ
輪が広がり、殺戮は一日中続いた。最後の一人が死に絶えると、世界中のすべての禿鷹の大群が、大伽藍を襲った。悉く破壊尽くされた断崖の上を静寂が包みこみ、断崖の麓にまで死臭が漂い始めた。その死臭はいつまでも、途切れることが無かった。やまびとたちは死臭を嗅いではお互いに断崖に、登らないことを確認し合った。やまびとたちは死臭を嗅ぐことで穏やかな幸せを、離すまいと願った。
そして、いつものように虚ろな眼で断崖を眺めた。
今までと変わらず、激しく海鳴りの音が聞えていた。
しかし、やまびとたちが思っている峻険な断崖は、始めからどこにも無かった。
眼の前には、見たことの無いいくつもの帆柱をもつ大船が数隻、港の岸壁に繋がれていて、遥か広大な海原が広がっているのだった。
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