内在/葉leaf
すべての窓は塵のためにあり、すべての部屋は海のためにある。建物は寒々とした記憶に従いみずからを組み立て、みずからを傷つける。鉱石たちは街路沿いに並び、うしなわれた手の密度を考えている。生れ落ちた日の空の残滓を暗転させている。そして、人々の影に踏まれる前にみずからを破壊する。
――闇に刺さった指から血液が生まれ、人によって隔てられたもうひとつの闇へと血の条をめぐらせてゆく。条の尖端からは水銀の葉叢が茂り、葉叢を取り囲むように葉緑体の丸天井がかさかさと闇をはじいている。
――夕日が大量の油を空に流しはじめると、その淵からは夥しい数の羽虫の鎖が涌いてくる。鎖の中空部には受精音が閉じ込められていて
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