それぞれの時間/石川和広
ダイニングの床をとおりすぎ
同居人のHさんはテレビつけっ放しにして
ねている
Hさん 帰ったで
「Hさん何してんの」
Hさんは「いやん」と言いながら
起きて笑って近づいてくる
Hさんは40代で
仕事もしていたが挫折した人だ
酒には時々だらしないが
人間はできている人だ
度のつよいメガネをふく
スラックスにセーター
知的障害者で大卒だ
みんなでTVをみる
「まだ阪神はじまらへんの」
うん、今、冬やしな
「阪神優勝するかなあ」
「せえへん」とHさん
みんなで笑いあったり
ぼくは後から来た介護者と
米をたいたり 洗濯物を取り込んだり
O
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