「幽霊」についての私的覚書/岡部淳太郎
存在は反社会的であり、幽霊もまた例外ではない。むしろ、僕自身が日頃から感じていた淋しさや社会への不満や怒りを、「幽霊」というはかない存在に託して書いたという方がより正確である。つまり、僕の中の「幽霊」とは、社会から容れられずに淋しさと不満を抱えた者の象徴なのだ。
最近「勝ち組・負け組」などという言葉がマスコミを通じて人々の間に行き渡っているが、僕はそうした単純に人に白黒つけるような価値観には真っ向から対立する。そのような考えを、僕はどうしても容認することが出来ない。「幽霊」というのは、そうした社会の中での過酷な競争から脱落したいわば「負け組」である。だが、「負け組」だからといって、単純にその存
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