「幽霊」についての私的覚書/岡部淳太郎
 
は人々の記憶から少しずつ忘れられてゆく宿命を持った存在であると規定した。そこに、「淋しさ」という感情が立ち表れてくるのだ。その「淋しさ」を核にして、「幽霊」であるがために自然に身につけた反社会性や、人々に恐怖を喚起させる特性を配置した。そのようにしてこの連作は書き進められた。
 もう少し詳しく言うと、それら淋しい幽霊たち、誰からも顧みられることのない幽霊たちを、詩の中で慰めてやりたいという思いが、僕の中にあった。幽霊たちは自分ではどうすることも出来ない淋しさを抱えて、その一方で淋しさと同時に不満や怒りも抱えている。ある意味では、幽霊は反社会的とも言える存在である。既成の社会の枠からはみ出した存在
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