「幽霊」についての私的覚書/岡部淳太郎
、幽霊というと、人に対して恨めしくて出て来るものであり、人間にとっては恐怖の対象以外の何ものでもないという、そんな固定観念がある。僕が連作「夜、幽霊がすべっていった……」を書くに当たって思ったのは、そうした世の中に流布している固定観念を崩したところから書き始めたいということだった。「幽霊」ではなく「超自然的な恐怖」がテーマだったらありえないようなソフトなタッチの詩(たとえば「忘却」や「物語」など)も、僕はこの連作の中に収めている。そこにあった僕の狙いは、「幽霊」を「恐さ」を通して見ることではなく、「淋しさ」を通して見ることにあった。「幽霊」を「死んでしまった者」として捉え、「死んでしまった者」は人
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