「静かの海」綺譚(11〜20)/角田寿星
いた
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目が覚めるといつもの殺伐とした部屋
脱ぎ散らかしたズボン
転がっているコップ 相変らずの地球の映像
頭の芯が痛む 煙草に火をつける
喉が灼けていてうまくない それでも
甘い余韻がどこかに残っている
余韻だけの淋しさ
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以前古物商と話した時
出されたお茶をすすりながら
大事そうに半畳の畳をトランクから取り出した
彼の言うには 一畳まるまるの畳は手に入らないんだと
不完全なカビだらけの畳を切り取って
半畳に継ぎ合わせて売るのだと
ぼくに言ってたっけ 畳の芳香が
今でもどこかに残る
18
「こんばんは」
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