「静かの海」綺譚(11〜20)/角田寿星
 


数日前に会ったばかりの友がやって来た
一言「こんばんは」を忘れたのだと言う
そういえば ぼくも忘れていたことに
今 気付いた

「やあ、こんばんは」


 19

桔梗色の空の下 だんだんと
世界が広がっていくのを感じる
薔薇もサンザシも見つからない
こんな世界でも


 20

心のなかの
小さな風車がひとり回っていた

せいいっぱいに風をうけて

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