手のひら/石川和広
するわけでもなく
おはよう こんにちは
するわけでもなく
ヘルパーだったわたしが空から
わたしをみている
ひたすらに世話を焼くこと
野蛮なまでに
それでいて越権は許されない
どこか紳士の世界
健常者と障害者のはざまで
ことばを沈黙を翻訳し続けていた
そうだ
おはよう
手の甲をわたしに向けて手を振る自閉症の人に
「ほらこっちやで」
手のひらはこっちやで
手のひらはこっちやで
ああつながった
目
合わせた
専門家はあわせられないっていうけどね
おきあがるまでの時間
手のひらはこっち
こっちって どっち?
それは外へ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(8)