未明とむらさき/木立 悟
光もなく影はあり
暗がりの上ゆうるりと
さらに暗いものが映りひろがり
そこだけが薄く押されたように
夜の道にたたずんでいる
得体のしれない心が歌い
海辺をひとり歩いてゆく
波間の虹に振られる手
虹の数だけ増えてゆく
明けゆく空を追う鳥に
むらさきはひとつ染みわたる
灯りのなかに
少しだけ淡い灯りがひらかれ
歩み去る見えないもののかたちを
夜の道に浮かばせている
むらさきから 鼓動から
生まれる白と黒の線
まばたきの合い間に交わされる
文字と色の会話たち
手をとる白と黒の線
輪になる白と黒の線
川辺の草に沿って
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