スイングバイ/霜天
 
日向の匂いと信じていたもの
そこにあることに感謝するごとに
僕らは証明されていく

あの丘の裏表
遠い星の不確かなこと
朧気な景色を回るようにして
それでも僕は帰っていくから

遠回り、今は
さよならと言い忘れて



真夜中の工事現場で振られる光
何も知らなければいいと、言えば嘘になるはずで
ペーパーテストの上の女子高生
答えを見ない瞳で誰かに語りかけたいはずで
駅で車内で、吐き出されていく靴音、表情
いつでも、どこかに寄りかかりたいはずで

誰も、わからないと言えば
すべてがすべてになれる
なんてそんなはずもなく
世界は平等に、寡黙だ
うずくま
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