恋愛詩の可能性/岡部淳太郎
 
。この詩ですぐに目につくのは対位法を多用していることだろう。二つの正反対の事項から導き出された行を並べてゆくやり方である。「ひかりが座席を必死になってうばいあい/くらやみが押しあいながら先を急いで地獄へ落ちるのを」「だれの精子があたたかくってもいい気持なの/だれの子宮がまあるくてのめっこいの」「赤いガーターをぼくはぎゅうっと握って/胸毛を三本あなたはひっつかんで」などの表現がそうだ。二人、男と女、であるがゆえの対位法なのだろうか。
 他にも第一連での「じっと/ながめていたっけ」という詩行を繰り返す部分に、詩として成立させようという努力のあとが見られるし、第二連の「おたまじゃくしがキーキー鳴いて」
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