恋愛詩の可能性/岡部淳太郎
くはぎゅうっと握って
胸毛を三本あなたはひっつかんで
ぼくとあなたは
手に手をとって逃げ出した
あなたとぼくは
大草原のすみっこにもぐりこんで
着ているものをみな脱いで
ていねいにおじぎして
一つ一つ差し上げた
むかしは尼僧のようだったあなた
あなたもくれた
激しくたたきつけて来る太陽の中で
めらめらと焔が燃えた
光が光にかさなった
けれども二つの火が燃えていた
(吉増剛造「プレゼント」全行)}
ここまで来ると、もう完全に「現代詩」の世界である。「捨てられたシジミの目つきで/もののかたちが大喧嘩するざまを」などという言い回しはいかにも現代詩的である。こ
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