恋愛詩の可能性/岡部淳太郎
をそのまま描写するのではなく、一歩引いた場所から自らの恋愛を書く。そうすることによって醸し出される情趣というものがある。
黒田三郎は詩集『ひとりの女に』の前半に収録した詩篇の多くで、これと同じ手法を使っている。「それは」「もはやそれ以上」「そのとき」などがそうだが、ある種ワンパターンと言えなくもない手法をこうまで多用したのは、それが恋愛詩を「詩」として成立させるために便利な手法だったからだろう。
{引用=ぼくとあなたは
大草原のすみっこにもぐりこんで
破れギターをかき鳴らしていたっけ
捨てられたシジミの目つきで
もののかたちが大喧嘩するざまを
じっと
ながめていたっけ
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